こころみBlog

メンタルケア専門の訪問看護師のBlogです。

病気であることが認識できない苦しみに寄り添う手段はあるのか?

喉が痛くて鼻水が出て、悪寒がすれば、、、風邪だわー

走って転んで膝をアスファルトでこすって血が出たら、、、擦り傷だわー

脚立から落ちて足が腫れ上がって痛い、、、骨折だわー

採血結果でCRPが高ければ、、、どっか炎症が起きてるわー

 

みたいに。

 

視覚的に、感覚的に、物理的に変化が起きて病気である認識をすることがほとんどですが。

精神疾患というものは、その多くが目には見えないもの。

他者はもちろん自分でもわからない場合があります。

 

自分は健康体だと思っているのに、周りから「病気だ」と言われ、病院に連れて行かれ下手したら入院させられ薬を飲まされる。退院したいと言えば言うほど退院できず。腑に落ちないまま何年も病院生活を送る。

 

病棟で働いている時にもそのような方にはたくさん出会いましたし、訪問看護師の今は、病棟よりもたくさんいらっしゃいます。

 

Nさん 50代 統合失調症

 

良い大学を出て、大手に就職したけれど本人の中では何か周りがおかしくなって退職。実際は統合失調症を発症したと思われる。その後自身でITの仕事を立ち上げるが、病状の悪化が原因でマンション住民とトラブルとなり警察に捕まり精神科に入院となって薬物治療など行い退院。退院後も通院し訪問看護やヘルパーなどが入って生活をしている。

 

しかし

 

本人はなぜ通院がいるのか、訪問看護師がくるのか、ヘルパーが来るのか。

未だ納得がいっていない。

 

何度か訪問に入った頃、あまりにも納得がいってないNさんを見ていたら

本当は患ってなんかいないんじゃないか?と錯覚するほど病気に対する意識(病識)がない。

でも、実際に状態が悪化するとすごい大音量でラジオやテレビをつけ、

何も言ってないのに「うん、うん。いや違う、それはね」などと明後日の方向を見ながら話している姿を見ると、いややっぱり患っているよ!!!と、心でねww

 

しばらくは、病識のなさに関わりが難しく、出来ることならあまり入りたくないな・・とさえ思いました。

でも

 

そんなNさんの苦しみをどうやったら緩和できるのか。

 

私はとにかく、本人の得意分野や「病気」ではなく「性格」の部分に焦点を当て話すように心がけてみました。やはり昔から賢くエリート街道を歩いてきた人。私の知らない世界を生きて来た人なのでそこを見てみることに専念。

そうすると自分の生きて来た人生や家族のこと、難しくて今思い返しても何のことだかさっぱりわからないITのこと、病気じゃないのに誤認逮捕された、入院させられたという思い、その後自分で仕事を再開させたいのにうまくいかないこと、未だに病人扱いされていること。色んなことを話してくださるようになり、私自身もNさんの苦しみに少し寄り添えたような(自負)距離感がつかめてきたところです。

 

精神科看護は「見えないものを掴む」技術が必要だと思います。

もちろん見えている表情や言動も見逃してはいけないですが、「気持ち」というありふれた言葉だけどとても深く繊細なものを掴みその人の本質を知ることが重要だと感じています。

Nさんとはこれからまだまだ訪問し向き合い続けます。

未だ認識できない病気と向き合ってNさんが少しでも楽になれるように。

 

[yome]